🍰ケトン食とイヌイット2020年11月15日 22:44


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2020年11月15日

ケトン食とイヌイット


ネットでケトン食に関するサイトやブログを見ていると、

「伝統的にケトン食のイヌイットは、野菜を食べないにもかかわらず健康で長寿が多い、という調査結果がある」

という内容をよく見かける。

ここで、25年ほど前に購入して今も所有している、野田知佑著『北極海へ』の中で、今までなぜか心の片隅に残って離れなかった一節が、がぜん輝きを放ってきた。


====引用==== 

北極海へ注ぐカナダのマッケンジー川をカヌーで下りはじめて40日ほどたった頃、川沿いのとある町に停留した野田氏は、炭水化物をほとんど食べずに身体を動かす日々だったせいなのか、お腹がへこんで精悍な体形になっていたが、原因不明の無気力感におそわれるようになった。 

どういうわけか、動作がのろくなり、ひんぱんにつまづくようになったのだ。 

その様子を見た現地のインディアンの老人に家に引っぱり込まれて、ボウル一杯の溶かした脂(ラード)を飲まされた。 

1リットルほどの溶かした脂を、野田氏はいっきに飲み干すことができた。 

翌朝、自分のテントで目覚めた野田氏は、元気になっている自分に気がついた。 

インディアンの老人にお礼に行くと、老人は次のように語った:

「あなたは、脂肪欠乏症になっていた。 

この地域にやってくる白人に、あなたのようになる人が時々いる。 

都会では赤身の肉だけで生きられるのかもしれないが、ここでは通用しない。 

たくさん脂肪をとらないと、ここでは生きていけないのだ。 

この川の下流に住むイヌイットたちは、なおさらそうだ。 

彼らは、我々インディアンの倍の脂肪を食べる。 

肉を3kg食べたら、別に脂肪を1kg食べる。 

そうしなければ、寒い冬は越せない。 

火を焚いて外から暖まるのではなく、脂肪を食べて体内で燃焼させて、身体の中から温めるのだ。」

野田知佑著『北極海へ』より、引用&要約。

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「そうか、疲れた時には脂肪を1リットルとればいいんだね!」

ほらほら、たまちゃんの短絡的なところが出た! 

野田知佑さんは、脂肪欠乏症になっていたから、1リットルの脂肪をイッキ飲みできて、身体の調子が回復したんだよ。 

そもそも、これは、カナダのノーザンテリトリーでの話。 

森林と大河湖沼がどこまでも広がり、グリズリーが生態系の頂点に君臨するとても厳しい自然環境のなかで、人間たちも日々、頭脳と身体をめいっぱい動かして肩寄せ合ってサバイバルしている、そういう場所の話。

北極海沿岸のイヌイットの人たちが伝統的に野菜をほとんど食べないのは、住んでいる場所が植物がほとんど育たない極北地で、しかも土地が永久凍土で農作物を作ろうにも鍬(クワ)が凍った地面に入らず耕せないからだよ。 

文中に出てきた、「火を焚いて外から温まるのではなく」っていうのは、そもそも木も生えない所で、あるとしたら流木ぐらいで、薪(たきぎ)が少ないからなんじゃないの?

 だから、灯油も電気もなかった昔は、脂をたくさん食べてエネルギー源にして、身体の中から温まるしか、零下何十度の冬を生き抜く方法がなかったんだよ。 

そのうえ、手に入れられる最もプレシャスな食べ物が、海獣だよ。 

人間たちが、巨大な海獣を仕留める漁は、一族総出の命がけの仕事だった。 

たまちゃんも昔観たでしょ? イヌイットの人たちの伝統的な漁を撮影した白黒映画を。 

たくさんのカヌーやカヤックで、氷山がプカプカ浮いている氷の海の上を縫うように漕ぎ回って、イッカククジラに向かって、アザラシの皮でつくった風船(浮き)がつけられた銛(モリ)を何本も何本も放って、少しずつ少しずつ追いつめて弱らせて、長い時間をかけてようやく仕留める。 

抵抗したり逃げようとして暴れ回る海獣と氷の海で真剣勝負する、極限環境での重労働だ。 

脂をたくさん食べないと、ぜんぜん仕事にならない以前に、命を落とすのが明らかだったんだよ。  

暖房が効いた日本の都市部に住んでいるデスクワークの健康な人間が、1リットルも脂肪を食べたら、かえって身体に毒だよ。


ほら、90年代に流行ったよね、「世にも美しいダイエット」っていうの。 

たまちゃんも感化されて、一時期やってたじゃない? 

「日本人だからこそ、伝統食のお米は消化吸収が良いので、あえて食べない。 

その代わりに、伝統的に食べていなかった強力粉のパンやパスタをちょっと食べる、そしてバターはどんどん食べてOK!」っていうやつ。 

たまちゃんも家で試してみたら、たしかに、夫婦ともに体重が減ったんだよね。 

でも、その後、そのダイエットの提唱者さんはどうなった? 

「倒れて病院に運ばれる直前には、ご夫婦でサラダ油1缶を2日で消費していたそうだ」みたいなことが言われたよね。 

提唱者さんは北極圏のイヌイットでもプロレスラーでもない、東京在住のファッション関係出身のエッセイスト。 

素人目から見ても、ちょっと油のとりすぎだったんじゃないかな?


それにしても、どうして、あのダイエットの提唱者さんはそんな過激な食事をするようになったんだろう? 最初の頃は、そうでもなかったのにね。


それは、ファッション誌から流行り出すようなダイエットは、まさにファッション(流行商品)だからじゃないのかな? 

「世にも美しいダイエット」っていう名前からして、若い女性に向けたファッションコンテンツだよ。 

確かに、あのダイエットは効果があった。 

あの提唱者さんは、身体の不調に悩んでいたところ、大病院でサジを投げられた深刻なガンや糖尿病の患者さんたちが、ワラをもつかむ思いで決死の覚悟で取り組む、或る食事療法を試したら、体調が回復した。 

だから、その食事療法に基づいたダイエット本を出したんだ。


でも、消費者は飽きっぽくて身勝手なもの。 

そのダイエットを試して効果があったのなら、それを淡々とずーっとずーっと続ければいいのに、トレンド商品やエンタメコンテンツと同じで、どこかの時点で飽きてくるんだよね。 

カルト信者よろしく提唱者を教祖様のように崇(あがめ)めたてまつる一方で、「教祖様、もっと他の新しい方法を教えてください!」と求め始める。 

そうなると、教祖様は、新しいアイディアをつけ加えたダイエット本を出すことになる。 

出版社も、売れるから、教祖様をけしかける。 

教祖様は、自分の身体でいろいろなダイエット方法をためして、新たなダイエットコンテンツを生み出し続けなければならない。 

自分の日々の食事を、つまりは自分の存在を、流行商品として売り続ける...。 

それは、とても大変なことだし、ストレスも多かったことだろう。 

そのうちに、どんどん実験が過激になっていって、最後に、自分で自分を滅ぼしてしまったのかもしれない。 

それに、この教祖様は、医者じゃなかったから、自分が試している新たなダイエットが身体にどんな影響を及ぼすかを、調べる術がなかったんだ。


どんなに良いものでも、 

過ぎたるは及ばざるがごとし。

昔の人の教訓は、真(まこと)がいっぱいだ。


野田知佑氏の本の話に戻ると、21世紀の現在、カナダのノーザンテリトリーに住むインディアンや北極海沿岸のイヌイットたちが、伝統的なケトン食で暮らしているかどうか? 

今は、イヌイットの人たちだって、外国人観光客向けのデモンストレーションじゃない、本当の実生活では、氷の家じゃなくてセントラルヒーティングの家で暖かく暮らして、犬ぞりじゃなくて4WDに乗っているからね。

 

それに、すでに野田氏の本の中に、「ここでも、日本のインスタント麺が食べられ始めている」と書いてあった。 

「ケトン食」単体だったら伝統的な暮らしに最適な食事だったけど、「インスタント麺 + ケトン食」は、とっても良くない組み合わせに思える。 

インディアンやイヌイットの人たちも、生活スタイルや食べ物の変化に応じて、伝統的な食生活を変化させて健康を維持しているかもしれない。


日本人だってそうだ。 

お米や雑穀やそばうどん+魚と野菜中心で、冬になると隙間風が吹き込んでくる部屋で火鉢の前で手をこすり、どこへ行くにも歩いて行った江戸時代から、今は伝統的な食べ物に加えてパンにパスタに多種多様のスイーツにスナック菓子に清涼飲料水に霜降りステーキにチーズに何でもかんでも!な、めくるめくような食生活になったうえに、冷暖房完備の家に住んで、移動は電車やバスや自家用車。 

そのあげくに昨今の在宅勤務。 

生活スタイルや食べ物の変化に応じて、伝統的な食生活を修正しながら健康を維持していくことが必要だよ。(←「こたろうのブログ」さんで紹介されていた次の方の記事にインスパイアされた:私の低糖質ごはん日記と犬と猫 糖尿病とがん(インスリン編))


てんかん発作など特定の病状に苦しむ人たちや、がんの再発を防ぎたい人たちには、ケトン食は福音(ふくいん)のような食事法なんだね。 

そういう方たちのブログを読むと、それが胸に迫りくる。 

そして、たまちゃんの今の健康状態には、ケトン食を参考にすることは大いにメリットがある気がする。 

とはいえ、人は、身長も体重も性別も遺伝的な特徴も、健康状態や日々の運動量も、労働の肉体的な激しさも、それぞれに千差万別。 

だから、健康的な食事法も、人によって千差万別。 

加えて、今日まで「正しい」とされてきた方法は、明日からは「間違っていました」になるかもしれない。 

「世にも美しいダイエット」の提唱者さんが倒れる直前に大量摂取していたサラダ油もそうでしょ? 

それに、様々な主張を声高に唱える人たちの後ろには、様々な存在や事情があるかもしれないし、実際に、その主張の下に多種多様なたくさんの機関や企業があって、そこで仕事をして自分や家族を養っている人たちが無数にいる。 

そういうことをふまえながら、よくよく自分の身体の中から聞こえる内なる声に耳をすまして、いろいろな情報を吟味しながら、あくまでも自己責任で、自分自身で考えて、自分に合ったオンリーワンのテイラーメイドの食事法を試行錯誤していこう。


せんじ詰めれば、こうなる。どんな食べ物も、

 

食べすぎるな!

二口女(ふたくちおんな)

 👆二口女(ふたくちおんな)。画像はウィキペディアより。





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